Vol.79  名古屋市「白鳥庭園」は名園だ!  -お客様をお連れできる名古屋の迎賓施設-

「名古屋市内の庭園は?」と聞かれて諸兄は何処を思い浮かべるだろうか。白鳥庭園を筆頭に挙げる人は少ないのではなかろうか。過日、白鳥庭園を視察する機会があった。名古屋は客人をお連れする場所がないと聞く機会に多々遭遇するが、白鳥庭園は迎賓にも使える素晴らしい庭園だと再認識した。二度目の入園であったが、改めて素晴らしい庭園と感嘆したのでこれを機にご紹介したい。

1.世界デザイン博覧会のパビリオンとして誕生  -徳川園よりも開園は早い!-

白鳥庭園は、1989年(平成元年)に名古屋で開催された世界デザイン博覧会(市制百周年事業)でパビリオン「日本庭園」として使用するため、堀川に接していた白鳥貯木場を埋め立てて整備された。メイン会場の一つとして整備された名古屋国際会議場とは姉妹施設だ。博覧会閉会後にも整備が加えられ、1991年(平成3年)に有料庭園として開園し、30年ほどが経つのであるから、徳川園よりも開園は早い(後述)。

ところが、市民にとって広く馴染み深いという庭園ではない。筆者にとっても今回の入園が二回目で、まだまだ未知の庭園だ。周辺には名古屋国際会議場のほかにも、名古屋学院大学、熱田神宮、熱田神宮公園、七里の渡し跡などの主要施設が豊富にあるのだが、名古屋市を代表する認知度エリアではない。もう少し正確に言うと、熱田神宮という圧倒的に知名度の高い資源はあるものの、周辺を回遊するエリアにはなっていないのが現状だ。

そんな事もあり、白鳥庭園は知る人ぞ知るといった庭園となっている。しかし、規模は大きく、造詣は特徴的で美しく、維持管理を行う事業者は熱心であり、来訪価値は高いと筆者は思う。我々市民が日頃から、四季を楽しみたいときや、お客様に名古屋案内をしたいときなどに有効な庭園だと認識しておくと良いと思う。

2.東海地方随一の規模を誇る池泉回遊式庭園  -コンセプトも造りも一級品-

白鳥庭園は、白鳥公園内の庭園という位置づけになっており、都市公園内の日本庭園としては東海地方で最も規模が大きい。世界デザイン博覧会の日本パビリオンとして整備されたことから、園内の構造は中部地域の地形をモチーフにした池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)の庭園となっている。池泉回遊式とは、池の周りに園路を巡らせるように設計された庭園を指し、日本庭園の代表的なレイアウトだ。

正門から左手奥の築山は御嶽山に見立てられており、そこから流れる清流が木曽三川を、池は伊勢湾を見立てたものとなっている。滝や巨石によって源流風景を、清流は渓流風景を、楓は渓谷の新緑や紅葉を表現しているという。中部地域のジオラマを表現することがこの日本庭園のコンセプトなのだ。それを知って散策すると、造園者の意図が想像できて楽しい。

庭園の中央にある本格的な数寄屋建築物は「清羽亭」で、広間や複数の茶室があり、予約をしておけば誰でも茶の湯を楽しむことができる。お客様をもてなす場として利用できそうだ。茶寮「汐入」には「汐入の庭」と名付けられた池があるのだが、この池は潮の干満を表現して景色を変える工夫がなされている。夏季にはかき氷がメニューに並ぶのだが、抹茶金時の「御嶽山氷」は見た目も味も堪能できる。ボリュームがあるので、帯同者とシェアしながら楽しむのがお薦めだ。夏の盛りに舌鼓を打った筆者が太鼓判を押す。

園内随所に様々な意匠を凝らした工夫がなされているのだが、全てを理解して散策することは一般市民には難しい。そのため、毎週土曜日には無料のガイドツアーが実施されているので、これを一度体験してみたいものだと筆者は思っている。さすれば、白鳥庭園の豆知識が身について、お客様をご案内する際に役立つだろうと思うからだ。

3.指定管理者の意気込みが感じ取れるが…  -認知度を上げる創意工夫は至難の業か-

白鳥庭園は名古屋市の公の施設(おおやけのしせつ)で、その維持管理・運営には指定管理者制度を導入している。白鳥公園の指定管理者は「しろとりの杜グループ」が指定されており、その構成員は岩間造園㈱、㈱トーエネック、(公財)名古屋市みどりの協会だ。これだけの大規模で本格的な日本庭園を維持管理できるのだから、その技量は大したものだと思う。無料のガイドツアー実施のためにボランティアガイドも育成しているほか、他の庭園や公園などとも連携した取り組みも行っているようだ。

民間らしくHPを丁寧に作り込み、情報発信もされているのだが、白鳥庭園の素晴らしさが広く浸透していないところを見ると、これは相当に難しい課題に思える。白鳥庭園のウリは「清羽亭」の茶室だと思うから、茶の湯を楽しむための定例イベントを創設してみてはいかがだろう。格式の高いものから一般向けまでラインナップを設けて定例化することで、白鳥庭園の認知度が徐々に高まっていくのではなかろうか。

しかし、既に様々な試行錯誤がなされているだろうから、上記のような筆者の思い付きぐらいでは認知度を上げることは容易ではなかろう。名古屋市がVIPの迎賓に積極的に使うのも一考かもしれない。また、白鳥公園にPark-PFIを導入して収益施設を設置することで相乗効果を狙うのも検討して良いと思う。官民が協力して盛り上げないと成果が上がり難いだろう。コロナ禍の今のうちに、じっくりと作戦を練って頂けると有難い。

4. 名古屋市の庭園を見渡してみると…  -徳川園、二の丸庭園のほかにもあれこれ-

これを機会に、名古屋市内にある日本庭園をいくつか見渡しておきたい。知名度が高いと思われるのは徳川園だ。元々は尾張徳川藩二代藩主の徳川光友の隠居所として建造された大曽根別邸の庭園である。1931年(昭和6年)に尾張徳川家から名古屋市に寄贈されたが、第二次大戦で戦災に遭い破壊された。その後は一般公園(葵公園)とされていたが、2005年(平成17年)に日本庭園として現在の徳川園に再整備された。

園内の龍門の滝は、尾張徳川藩江戸下屋敷戸山荘跡(現、早稲田大学戸山キャンパス)で発見された遺構を移設したもので、20分おきに水量が増加することで景色が変わる仕掛けとなっており、徳川園の名物となっている。再整備後に開園して20年も経っていないが、市民にとっては名古屋を代表する日本庭園として定着しているように思う。それは、尾張徳川藩主の別邸跡であるという歴史性と、徳川美術館や蓬左文庫(おうさぶんこ)と敷地が隣接して一体的に整備されている事によるものだろう。レストランやカフェバーがあることも、市民の利用を促している。いずれにしても、尾張徳川家を偲ぶ施設であることが関心を惹きつけているように思える。

尾張徳川家と言えば、名古屋城二の丸庭園を上げておかねばならない。二の丸庭園は、名古屋城の二の丸御殿(2018年に復元が完成した本丸御殿よりも大きかった!)に造園された大名庭園であるが、名古屋城郭を旧陸軍が管理していた時代に一部が破壊され、第二次大戦時にも被害を受けた。現在は部分的に公開されながらもなお修復中で、完了は2025年以降になるという。将来、二の丸御殿の復元(未定)と合わせて往時を偲ぶことができるようになれば理想的だと願っている。

なお、名古屋城郭内には三の丸庭園跡というのもある。三の丸は尾張徳川藩に仕えた高級武士の屋敷が立ち並んだ区域であり、今はそのほとんどが国・県・市の官庁街となっている。このうち、名古屋市公館の庭の一部に残されている遺構が三の丸庭園だ。名古屋城の土塁をそのまま築山に利用しているところが特徴という事だが、名古屋市公館を一般市民が訪れる機会はほとんどなく、三の丸庭園は知られることなくひっそりと佇んでいる。

名古屋市は第二次世界大戦の戦禍によって多くの歴史的資源が消失したことが大きく影響し、現存する日本庭園は限られており、観光資源や市民の憩いの施設とは必ずしもなっていない。しかし上記以外外にも、大正時代の名古屋で繁盛した料亭「八勝館」の庭園、尾張徳川家の祈願寺として繁栄した八事山興正寺の「竹翠亭庭園」、大正時代の洋館建築で一時は名古屋市長公舎としても利用された「東山荘」の庭園、松坂屋初代社長の伊藤家の別邸として建築された「揚輝荘」の庭園、織田信長の伯父にあたる織田信光の菩提寺「凌雲寺」の庭園などが存在しており、各々に特徴的な景色を表現している。こうしてみると、意外に和と触れ合える日本庭園が点在しているので、名古屋の四季を楽しむ場所として、折々に利用してみたいと改めて思った次第である。

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