Vol.3 コロナ禍に求めたい政治と政策 -国民による自発的ロックダウンとアドレナリン創出型金融支援―

1.専門家の警鐘と乖離する政治姿勢

2020年12月21日。西尾市議会議員14人が、市議の一人が経営する市内の旅館で懇親会を行った問題が報じられた。市長と地元選出衆議院議員が挨拶して退席し、市議会議員らはコロナ対策をして宴会をしたという。

この問題は、「コロナの危機が高まっている」と警鐘する専門家や医療現場に対して、政治と国民の行動がシンクロしないことの象徴だ。政治の対応は緩慢で、国民の行動には緩みが見られる。専門家や医療関係者の焦燥感との隔たりこそが、心配すべき根源だと筆者は思う。その後、緊急事態宣言が11都府県に発令されたがタイムラグ感は否めない。

人が動けばウィルスが動く、人と人が接触すればウィルス感染が広まる、という構造的な原則に基づき、感染を防ぐ行動を取るよう専門家会議は警鐘を鳴らし続けていた。その鳴らし方や対策案の示し方にも議論の余地はあるように思うが、ここでは、専門家の警鐘に対する政治の対応の緩慢さを論点としたい。

人が動けばウィルスが動くという警鐘があってもGOTOトラベルを続け、人と人が接触すれば感染が広まるという警鐘があってもGOTOイートを断行した。そして、これらの経済活性化策を一時中断するまでに要した時間が、筆者が懸念するタイムラグであり、一致団結感と程遠いチグハグ感だ。そして、多くの知事たちが会食等を謹んでステイホームを訴えているにも関わらず政治家が会食を続ける。これはタイムラグというよりは、「自分たちは特別」という特権意識なのだろうか。政治家が専門家の警鐘に対して機敏に対応せず、政治判断するまでにタイムラグがあることで、国民に「専門家の警鐘は半分ぐらいに聞いておけばよい」という誤った認識を与え、国民の行動の緩みに繋がってはいないか。特権意識などかなぐり捨てて国民の代表として規範となる行動を示そうという姿勢が示されない事が、国民の間に行動変容が巻き起こらず第三波に歯止めがかからない温床になっていないか。このように筆者には思えるのだ。

2.政治家が範を示すというリーダーシップ

日本では私権制限の観点からロックダウンという強制的な行動規制措置を取ることができないという。ワクチンや特効薬が未だない以上、「国民が動かず人と接触しない」という自粛行動を自発的に行うしかないように思える。言わば、国民による自発的なロックダウンだ。これを促すのが政治の役割であるならば、政策判断を機敏にして、政治家が率先して行動変容を見せなければ、いくら「お願い」を繰り返しても全国民が一斉に行動を抑制するなど、政治家の虫の良すぎる期待に過ぎないと言っても過言ではなかろう。緊急事態宣言を発令しても日中の人出が減少しない現況は、自発的ロックダウンからは程遠い。

先の14人で会食した西尾市議の問題に話を戻そう。筆者としては、旅館の経営者である市議の行動に期待したいところだった。「コロナ対策をしているので是非当館へお越しください」という旅館の経営者としての立場は理解できるが、市議会議員である以上、旅館の玄関に仁王立ちとなり、「ダメだ。皆さん、今日は止めよう!」と同僚議員に政治家としてのあるべき姿を啓発して欲しかった。そして、同僚議員がこれに同調して「そうだ。我々から西尾市民に行動変容を求めよう」と行動したのであれば、「あっぱれ西尾市議会」となったはずだ。政治家としてのリーダーシップを発揮し、範を示す好機だったのに残念だ。

コロナ禍を通して感ずるのは、日本の政治家のリーダーシップのあり様だ。本来は科学と法律に照らして適切な判断を下すことが求められるのは言うまでもないが、今我々が直面しているのは、科学の力が間に合わず(ワクチン接種や治療薬が不透明)、法的整備が不十分な状況だ。科学と法律という効果的な武器を持たない中で、コロナという敵から攻め込まれている。我々は、丸腰で防戦を余儀なくされているのだ。こんな時はチームワークでしのぐしかない。しかし、日本というチームの動きがチグハグで一致団結できていない。こういう時こそ指揮官が檄を飛ばし、一丸となってチームワークよく戦えるように呼びかけねばならない。このリーダーシップが今日の政治に見られないのが国民側からは歯がゆいのだ。行動変容を全国民に巻き起こすような強いメッセージの発動と、自ら範を示す行動型のリーダーシップこそが求められているのではなかろうか。そして今、一致団結のキーワードは「不要不急」にあるように思う。我々が不要不急の外出をいかに厳格に見極め、抑制できるかに関して一致団結が求められている。

3.国民による自発的ロックダウンの代償対策

全国民が自主的にステイホームを励行して、事実上のロックダウン状態を作れば、第三波の歯止めに一定の効果が上がるように思える。しかし、そこには多大の代償が伴う。

悪影響の直撃を受ける代表的な産業は飲食業や観光業だが、そこに商品やサービスを供給する産業にも打撃は連関する。また、個人経営をする多くの業界の経営者やフリーランスも苦しい状況を余儀なくされることは必至だ。

これまで政府が講じてきた代表的な経済支援策は、雇用調整助成金や持続化給付金などだ。そして地方自治体が要請した休業や時短に協力した店舗等に協力金を支給している。これらは全て税金を原資とする支援金であり、一方的に与えっ放しの給付金である。受給者にとっては有難いのだが、支給額が小さければ「やってられない」と文句が出るし、給付する行政側もいつまでも続くものではない。自治体の協力金に限って言えば、一律感が強くて公平性が確立されていないことに課題があると筆者はみている。固定費(家賃や人件費)が大きい店に手厚く給付できる仕組みを導入しないと協力店が広がっていかないだろう。

加えて、コロナ禍が沈静化した後に、日本経済が力強く反転攻勢していくためには、事業者の自助努力を促すアドレナリンともなり得る経済対策が必要だと思う。それは給付金型の支援よりも、貸付型の支援が良いように筆者は思う。無利子で返済据え置き期間(例えば2年据え置き、その後5年で返済など)を設けた貸付制度を作れば、借り受けた事業者は感謝もするし、据え置き期間に経営を立て直し、或いは新たなビジネスモデルを用意して返済努力もするだろう。この返済努力を促すことがアドレナリン創出効果となる。そして補助金型の支援策よりも明らかに規模の大きな現金を手にすることが出来るようにすれば、経営者として大胆な取り組みが可能になるはずだ。政府側は貸付金の原資となる資金調達を行う必要があるが、国債を発行して充てれば、受給者による据え置き期間後の返済によって償還も可能だ。国債発行による利払いだけを国庫から手当てすれば可能なスキームだと思う。

給付金型の支援だけでは、規模が小さくて「焼け石に水」とか「中途半端」との指摘を受けるし、与えっ放しの制度では有難味も伝わりにくい。大胆かつ大規模な貸付制度を創設すれば、事業者たちの商魂に火を着け、コロナ禍後の日本経済の発展に一役買うエンジンともなる可能性がある。イノベーターや起業家たちにとっても活用できると思う。地方自治体としてこうした金融支援制度を創設すれば、意欲のある事業家たちが集まってくる可能性もあろう。

一連のGOTO政策は、新型コロナ感染症が沈静化してからであれば、奏功するはずだ。感染症が治まらない期間(まさに今)に政治がリーダーシップを発揮して取るべき枠組みは、国民による自発的ロックダウンに向けた行動型リーダーシップとアドレナリン創出型の金融支援ではなかろうか。

起債を原資とする無利子貸付(据置期間付き)スキームのイメージ

(注:数字はイメージで市場の利回りを反映したものではない)

・政府は、10年債を100起債するとして、クーポン(金利)1%とすれば、インキャッシュが100でアウトキャッシュは110となる。

・事業者は、政府から無利子融資を受け、据置期間2年を経た後、5年間で元金均等返済。インキャッシュとアウトキャッシュは100でイーブン。 ・政府は、事業者から元金の返済を受けた資金を運用し、106を得る。先の政府のアウトキャッシュ110(償還資金)に充てれば、相殺後では4のアウトキャッシュ超過で済む。

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