Vol.149 幻のリニア名駅&高速道路直結プロジェクト(その2)  -関係機関で検討も実現せず-

(vol.148「その1」からの続きです)

アムステルダム方式にならい、リニア中央新幹線(以下、リニア)が発着する名古屋駅の西口に高速道路を直結させることを提案したところ、非公式ではあるが関係機関により検討を重ねて頂いた。結果的には実現には至らず、副産物として名古屋都心部における高速道路の機能強化へと繋がった。その経緯を回想するとともに、今後への期待を綴りたい。

1.名駅への高速道路直結を提言  -結節上部空間の開発もセットで-

名古屋駅の西口にはエスカ地下街があるが、その地上部に高速道路をアムステルダム方式(vol.148ご参照)によって多層式に引き込み、各層を車種別に制御することによって乗降動線や荷捌き動線を確保するという考え方でイメージ図を描いた(2012年頃)。同時に、高速道路結節部の上部空間を都市機能の受け皿として整備することができれば、名駅のポテンシャルを最大限に引き出せると考えた(図表1)。

駅ビルのように見える高速道路の上部空間は、その3分の1ほどを立体駐車場として利用することを想定しており、東海地域の人々が広域的に高速道路を利用して名古屋駅にアクセスし、駐車後に地下に下りればリニアに乗れるという交通結節拠点を想起した。また、その他にオフィス機能、コンベンション機能、商業機能等として利用することも想定した。リニア上空のオフィスは利用価値が高く認められるだろうし、リニア上空にMICE機能があれば千客万来は間違いないだろうと考えたものだ。

図表2は、アムステルダム方式にならって多層式に構成する高速道路のイメージで、自家用車やバス、貨物車などの車種によって進入路を分け、図表3に示す例のように各階層に車種別動線と空間を確保することによって乗降や荷捌きを行うことが可能ではないかと議論した。このような形態にすることで、名駅にアクセスする自動車交通は、一般道に下りることなく目的を達成することができる。インターチェンジではないので、一般道に交通負荷をかけることもない。

結節部としてエスカ地下街の上部空間が望ましいと考えたのは、地権者が3人しかおらず(名古屋市とJR東海、エスカ地下街)、複雑な地権者間の調整をする必要がないと考えたからだ。また、西口に高速道路結節部を作ることによって、名駅西口エリアの再開発機運を促す導火線にもなると期待した。但し、問題は、名駅西口に高速道路を引き込むルートをどうするかであった。

2.名駅西口への高速道路ルートを各種検討   -関係機関が非公式に協議を重ねたが…-

各種の公的な会議等で名古屋大学の森川教授も同様に提言されたこともあって、関係機関は非公式ではあるが検討に動いた(2013年頃だったと思う)。中心的な役割を果たしてくれたのは、国土交通省中部地方整備局道路部で、道路部長の「スタディせよ」という指示のもと、同局道路計画課が複数のルート、工法、建設費などを検討し、愛知県、名古屋市、名古屋高速道路公社を招集して資料提示をしながら協議するというスタイルだった。業務時間外の夕刻以降に関係者が集まって相談する中に、筆者も同席した。公式な会議以上に、このような非公式の相談が新しい取り組みを生む上で重要な機会なのだと実感した。

複数のルート案の中で最も期待されたのは、ささしまライブ21上空の名高速に分岐点を設け、ここから都市計画道路椿町線の上空を通して名駅西口に結節するルートだった。しかし、中部地方整備局が行った技術的な検討によると分岐点の空間が狭く適切な曲率半径と勾配を確保することができないという。止む無く他のルートの検討がなされ、名高速の黄金ランプからロングランプで結ぶルートや、東口側の新洲崎JCTから分岐を作ってJR東海と名鉄の線路上空にオーバーブリッジを架けて西口に結ぶ橋梁ルートなども俎上に上がった。しかし、いずれも工事・工法が大掛かりなものになり、建設費も跳ね上がるなど、「帯に短し襷(たすき)に長し」で適切案とはならなかった。残ったルートは、新洲崎JCTから分岐して名駅東口に結節させるルートだったが、諸般の事情からもこれも消えた。

この間、中部地方整備局は意欲的に検討して愛知県、名古屋市に繰り返し資料を提示した。当初の空気感は、中部地整道路部の積極姿勢に対し、名古屋市が慎重姿勢で、愛知県が中立という構図であったが、徐々に名古屋市、愛知県も前向きな姿勢に転じていくという展開であった。また、名駅地区にとってインパクトの大きな話なので、様々なステークホルダーが存在し、それらのキーパーソンと直接にお話しをしながら合意形成の糸口を探索したが、実に千差万別の思惑が錯綜した。それらの舞台裏の攻防は差し控えておきたい。墓場まで持っていこうと思う。

概ねの形勢としては、財界は賛成、中部地方整備局は積極姿勢、愛知県は名駅の結節部から中部国際空港へのアクセス性向上を重視、名古屋市は名駅地区を含む都心エリアから高速道路へのアクセス性を高める事を重視する中で、リニア名駅に高速道路を直結する事を共通に目指した検討であったが、その最適ルート案が見いだせず立ち消えとなった。幻に終わったのである。

3.副産物として残された成果   -名古屋都心部の高速道路機能の強化-

この非公式での検討以降も、名古屋市ではリニア開業を展望した名古屋都心エリアへの高速道路からのアクセス性の向上策が検討された。筆者としては名駅直結プロジェクトの副産物的に映るものの、名古屋都心部の広域アクセスを向上させる効果があり、歓迎したい。

具体的には、①新洲崎JCTから分岐した出入り口の新設、②栄出入り口(久屋大通公園付近)の新設および丸田町JCTの南向きからの西渡線の増設、③黄金ランプにおける追加出入口の増設、の3点である(図表4)。

新洲崎JCTから引き出される新たな出入り口①は、名駅東口地区にとって高速道路とのアクセス性を高めることが可能となる。名駅通りの交通量負荷対策が課題となるが、ターミナルスクエア(名駅の乗り換え利便性を向上させる空間)を含めた名古屋駅前広場の再整備によって自動車交通の整流化に期待したい。新たに整備される名高速の栄ランプ(出入口)②は、栄地区への広域アクセス性を高めることとなり、西渡線によって南進してきた交通の栄地区や名駅東口地区へのアクセスが容易となる。ここでも久屋大通等の交通量負荷対策が課題となるが、大規模駐車場の再編などが検討されており、自動車交通の整流化を期待したい。名古屋高速の黄金ランプの出入り口の増設は、都市計画道路椿町線を介して名古屋駅西口地区と高速道路とのアクセス性を高めることが期待できる。幻に終わった高速道路の名駅直結プロジェクトの代替性が最も強い対策だ。

これらの名古屋都心エリアにおける高速道路機能の強化対策は、都市計画決定されて実現に向けて動き始めている。リニア開業に向けたインフラアップを名古屋市は着実に進めている訳で、リニア効果を拡大することに寄与するものと考えられる。

4.幻に終わったが捲土重来を期したい   -WISENET2050を受けて「多モード結節」を-

国土交通省が社会資本整備審議会道路分科会において2023年10月にとりまとめた次世代型高規格道路の在り方(WISENET2050)では、全国における高規格道路の整備延長の目標(14,000km)の実現が概成してきたことを踏まえ、移動速度というサービスレベルの向上に重点をシフトする方針が打ち出された。同時に、これまで整備されてきた高規格道路網(ストック)を有効に活用する観点から、空港・港湾・リニア駅等の交通拠点と高規格道路を結節することが重要であることも示されている。

欧州では、新幹線、都市間鉄道、LRTなどが結節する拠点駅に、高速道路、バス、タクシー、自家用車などと乗り換えを容易にする「多モード結節」(複数の交通モードを結節させて乗り換え利用を可能とする考え方)という発想のもと、先進的に取り組まれている事例がある。vol.148で紹介したアムステルダム中央駅もその一例で、その他にもストラスブール、カールスルーエ、ミュールーズなどでも、各々のスタイルと組み合わせで多モード結節の取り組みがなされている(トランジットモールも含まれる)。人流も物流も多モード結節が進むことで効率性が向上することは間違いない。

リニア名駅&高速道路直結プロジェクトは、日本で先行して大規模な多モード結節を議論してきたことになる。残念ながら幻に終わったのではあるが、WISENET2050の方針を受けて、いつの日か捲土重来の機会が来るかもしれない。新たな知恵が生み出されることを、ひそかに期待している。

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