Vol.83  民活シリーズ⑨ BTコンセッション方式を理解しよう  -BTO方式との違いに焦点を当てて-

PFI手法の中にコンセッション方式があることはご存じの方も多いと思う。しかし、最近はコンセッション方式も多様化している。内閣府は、BTコンセッション方式を採用するよう模索することを推奨しているのだが、その理由を知るためには、類似性の高いBTO方式との違いを明確に理解することが有効だ。愛知県新体育館はBTコンセッション方式を採用した。地域の主要プロジェクトが何を希求しようとしているかを知る上でも良い材料だと思う。

1.BTO方式とBTコンセッション方式の類型  -どちらも独立採算型と非独立採算型がある-

PFIにおけるBTO(Build Transfer Operate)方式とは、PFI事業者が公共施設を設計・建設して竣工した後、直ちに行政が施設を買い取り、その代金を契約期間を通して割賦で支払う方式を言う。開業後は、維持管理運営費の全てをPFI事業者が稼ぐ収入で賄う場合は独立採算型と類別され、PFI事業者の収入で賄えない部分を行政が負担する場合はサービス提供型と類別される。PFIは公共事業において導入される民活手法であるから、独立採算が成立する事業は当然にして少なく、我が国におけるPFI事業ではBTO方式サービス提供型が最も多く採用されており、代表的な手法となっている。

これに対し、BT(Build Transfer)コンセッション方式とは、設計・建設まではBTO方式と同じで竣工した公共施設を行政が割賦で買い取る。その後、維持管理運営費の全てをPFI事業者が稼ぐ収入で賄う場合を独立採算型と類別し、行政が一部負担する場合を混合型と類別する。文字で書くと、BTO方式と同じ表現となり、何が違うか分からない。但し、独立採算が成立する場合は、行政とPFI事業者との契約が成立した段階でコンセッションフィ(運営権対価)をPFI事業者が行政に支払うこととなる。混合型の場合のコンセッションフィはゼロという扱いになる。しかし、これでもBTO方式との違いは明瞭とはならない。

コンセッションフィ(運営権対価)は、公共施設の維持管理運営を行うにあたり、公共サービスを提供するとともに収益事業を行う事に関する裁量を民間事業者が得ることへの対価なのであるが、換言すれば収益機会を獲得する権利の対価と考えても良い。契約期間を通して獲得する総利益の一部を、前倒しして行政に支払うことになる。民間側が、コンセッションフィを支払っても契約期間内にそれを回収して、さらに利益を確保できると目論める場合に成立する。

BTコンセッション独立採算型ではこれが発生する訳で、独立採算から生まれる利益の一部を契約当初に行政に支払うのであるが、入札の際はこの金額が競争の対象となる。一方、BTコンセッション混合型の場合は、ランニングコストの全てを収益で賄えない(独立採算が成立しない)ため、利益の前払いを行うことはできないことから、コンセッションフィをゼロとして入札条件に規定することとなる。

従って、BTコンセッション方式混合型はコンセッションフィが発生しないという点でBOT方式サービス提供型と同じであるから、両方式は見た目の類似性が特に高いのである。

2.BTコンセッション方式混合型のVFMの構造  -ポイントは付加価値投資-

BTO方式サービス提供型とBTコンセッション方式混合型の違いを明確に理解するためには、VFMの構造を紐解く必要がある。VFM(Value For Money)とは、従来型の公共事業とPFI手法を導入した場合とを比較して、PFI手法の方が「安くて良いサービス」を獲得できる場合にVFMが向上すると定義する。言うなれば「お値打ち」ということだ。仮に、同じサービス水準だと仮定して比較すれば、PFI手法の方が安く公共サービスを調達できると判定され、財政負担の縮減に貢献するとして評価される。

ここでは、BTO方式サービス提供型とBTコンセッション方式混合型が共に非独立採算型であって類似性が高く、一般的に独立採算の成立が困難な公共事業において汎用性が高いことから、この両者を対象にVFMの構造を比較する。

BTO方式サービス提供型の場合のVFMは、性能発注で発注されることに起因して民間能力(主として技術力)が発揮されて建設費が縮減するVFM①(図表2上段の左側)と、維持管理運営段階において行政の負担するコストが縮減するVFM②(図表2上段の右側)が合算されることで発現する構造となっている。維持管理運営費の縮減(VFM②)は、人件費や材料調達費などの縮減と、収入増が働いて発現するものであり(公共負担①―公共負担②)、民間能力(主として経営ノウハウ)が活かされることで実現する。ここまでは、PFIを御承知の諸兄にとっては、基礎知識の範囲だ。

そして、次がBTコンセッション方式混合型である(図表2の下段をご覧頂きながらお読み頂きたい)。コンセッションとは、運営権を民間に与える契約を意味するので、収入を上げるためのPFI事業者の裁量が大きい。そのため、最低限必要と要求水準に規定される施設や設備を設計・建設することに加えて、稼ぐ機会を高める付加価値投資をPFI事業者の提案で行い、これによってPFI事業者がより大きな収入を得ることを企図する方式となる。

この場合のVFMは、BTO方式とは異なる構造となって発現する。建設費については、最低限必要な機能に付加価値投資分が加わるため、必須事項の範囲ではコスト縮減したとしても、付加価値投資によって建設費総額が増加する可能性がある。つまり、建設段階のVFM①´はマイナスとなる(費用が増加する)ことが想定される。

一方、維持管理運営段階になると、必須事項のランニングコストが縮減されることに加えて、付加価値投資分が機能発揮することによって収入が一層に増加し、行政が負担すべきコストがより大きく縮減する可能性が生まれるのである(VFM②´=公共負担①´―公共負担②´)。その結果、VFM②´はBTO方式のVFM②よりも大きくなり、VFM①´が付加価値投資によるコスト増加によってマイナスに働いた(建設費総額が増えた)としても、これを打ち消して更に大きなVFMを確保することができるという考え方だ。

つまり、民間のアイデアによって提案される付加価値投資と、その資産を活用して経営ノウハウを発揮することにより、BTO方式サービス提供型よりもBTコンセッション方式混合型の方がVFMが大きく発現する(VFM<VFM´)ことが期待できるとの認識に立ち、内閣府はコンセッション方式を推奨していると解されるのだ。換言すれば、BTO方式サービス提供型よりもBTコンセッション方式の方が民間能力の活用深度が深く、民活手法としてダイナミックだという訳だ。

但し、民間企業側から見ればコンセッション方式の方が提案力に差が出やすく、運営段階での高いノウハウが必要なうえに、責任も大きくなることから、参入のハードルは高くなるという側面も理解しておく必要があるし、全ての事業で一様にこのような構図があてはまるとは断言できず、各事業の持つ特性を的確に把握して事業方式を採択する必要がある事は論を待たない。従って、事前の可能性調査にスキルの高い調査能力が求められる。

3.愛知県新体育館はBTコンセッション方式  -今後、市町村でも導入が増えていく-

内閣府がコンセッション方式の導入を推奨する上で、主たる対象と期待しているのがスポーツ拠点施設だ。例えば、アリーナ(屋内型多目的運動施設)がその代表例だ。屋内スポーツの興行収入を多種多様に組み立てる(一つの競技に限定しない)事に加えて、試合の端境期には音楽イベントや見本市等を開催することによってアリーナの稼働率を高めることが収入を増進する上で最重要なのであるが、これに加えて例えば商業施設などを併設することで、収入機会をより大きなものとすることも可能となる。

愛知県新体育館の整備・運営事業では、BTコンセッション方式が採用された。筆者が理解するところでは独立採算型が適用され、コンセッションフィ(運営権対価)が発生する契約を事業者(前田建設工業グループ)と締結した(2021年5月)模様だ。付加価値投資がどのように施され、収益増進をどのように実現していくのかを期待と共に見守りたいと思う(図表3イメージ図を御参照)。

一方、BTコンセッション方式独立採算型を採用できる事案は限られ、同種の事業を抱える地方自治体ではBTコンセッション方式混合型の採用が多くを占めていくだろう。いずれにしても、BTコンセッション方式を採用するという事は、付加価値投資を民間に提案させることを意味するのであるから、意欲的な提案を募ることが可能かどうかを事前に見極める眼力が行政には求められ、PFI事業者として手を上げる民間側には収益機会の増進を実践する手腕が求められる。内閣府が推奨するコンセッション方式の普及は、ある意味で地域活性化の起爆剤としての役割を担っていくのかもしれない。今後の展開が注目される。

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