Vol.47市民のゴミを活用したい!田原市 「炭生館」 秘話 (その1)-愛知県下自治体PFI第一号として誕生-

田原市「炭生館」は、家庭から排出される可燃ゴミを処理して微粉炭を製造する一般廃棄物処理工場だ。2020年4月をもって15年間のPFI事業契約を満了し、現在は所有権が市に移管されて運転を続けている。PFI法整備直後から取り組まれた第一世代とも呼べる事業たちは、こうして契約満了時期を迎えつつある。田原市の炭生館もその一つ。立ち上げ当時を振り返りながら、PFI事業としての炭生館が果たした役割を2回にわたって考えたい。

1.RDF製造事業を継承せよ!  -資源循環型社会の構築を希求した町長の思い-

愛知県田原市は、旧田原町、旧赤羽根町、旧渥美町が合併して現在の市となった。この合併前に炭生館の誕生前夜があった。旧田原町長は、資源循環型社会の構築を目指す一環として、家庭から排出される可燃性の一般廃棄物を固形燃料の原材料とし、RDF(廃棄物固形燃料:Refuse Derived Fuel)を製造する施設を町の一般廃棄物処理工場として整備・運営していた。しかし、ここから生まれるRDFの利用先は広がりを見せないまま施設は老朽化し、新しい施設の整備事業が必要となった。一般廃棄物は、市町村の責任で処理工場を整備しなければならない。旧田原町長は、建て替えにあたりRDF事業を継続できる新施設の整備を望んでおり、担当する環境課はその実現を模索していたが、当時の田原町を取り巻く環境には、これを容易としない事情があった。

最大の障壁は、3町が合併することが決まっていたため、新しい処理工場が受け入れるゴミ量は増加することが確実で、RDF方式を採用すれば製造されるRDF量が増え、利用先の確保が今まで以上に困難になることが想定されたことである。RDFを燃料として利用するためには、専用の焼却設備が必要となることから、利用施設側に負担が生じることが最大のネックとなっていた。特に、早くからRDFを導入した旧田原町の施設は旧式の設備で、製造されるRDFはフラフ状(綿状)のものであったため発熱量も低く、利用が進む状況ではなかった。また、RDF技術はフラフ状よりも発熱量の高いペレット状へと進化していたが、依然として利用が広がる情勢にはなく、固形燃料として有償で買い取られる場合であっても買い取り単価が低く、輸送費が嵩んで実質的には逆有償(コストを払って買い取ってもらうこと)に等しい状況が多くみられた。こうしたことから、旧田原町の環境課は、対応に苦慮していたのである。

2.技術開発状況に応じた事業の組み立て   -資源循環技術はRDFに限らない-

これを聞きつけた筆者は、制度化されたばかりのPFI手法を導入することで課題を解決できるのではないかと直感した。旧田原町長が希求していた資源循環型社会の構築は崇高な理念であるから何とか実現をサポートしたい。問題は、これを実現する技術をRDFに限定していることにあるのではないか。民間は、RDF製造技術に限らず、一般廃棄物をエネルギーに転換させる新しい技術を開発している模様であり、そうした先端技術を導入することで道は拓けるのではないか。そう考えたのだった。

さっそく、当時の田原町環境課長に面談を申し入れた。2000年頃だったと記憶している。筆者は、新しい技術の分布状況を調査して把握すること、そして民間の最新技術を導入するとなればPFI手法の導入を検討することの2つを提案した。環境課長(後述)は大変熱心な方で、1999年に制度化されたばかりのPFIのことを既に知っておられた。環境課長もまた、その可能性を察知し、「町長と相談する」と筆者の提案を預かられた。結果、PFI導入の検討はさて置き、可燃ゴミを資源循環する技術動向を調査することについては町長の指示が下されたのだった。

調査の結果、RDF以外にも、炭化技術やゴミ発電技術などが実用化していることが把握された。RDFに限定せず、こうした複数の技術の中から費用効率が良く、実現性の高いものを選び、その運転とエネルギー利用を一括して民間に委ねるため、PFI手法の導入を検討するべきではないかと、筆者は旧田原町長に対して環境課長とともに熱く直言した。町長は、RDFに拘りを持っておられたが、資源循環型社会の構築に一歩でも近づくならと、「それほど言うならやってみなさい」と検討を了承された。かくして、愛知県下における第一号PFI案件として、旧田原町の新しい一般廃棄物処理工場の整備・運営事業の検討が始まったのである。当時30代だった青二才の筆者に耳を傾けて下さった白井町長には、その後非礼を詫びる機会はなかった。しかし、この事業を成功させることで報いたいという思いを強くしたことを鮮明に記憶している。

3.BOT方式とした理由   -環境省はBOT方式に限り補助金を交付(当時)-

我々は、PFI事業として実施するための様々な検討と募集準備に着手したのであるが、何しろPFI黎明期であったため、暗中模索の連続であった。代表的な検討課題を振り返っておきたい。

まず、当時はPFI法が整備された直後で、ゴミ処理施設での導入事例はごく限られていて、それらは全て「BOT方式でなければ補助金を出さない」という環境省の方針に基づいて実施されていた(今は事情が大きく異なるが)。従って、必然的にゴミ処理工場の整備・運営事業にPFI手法を導入するに際しては、BOT方式を適用するしかなかった。

BOT(Build Operation Transfer)方式とは、対象施設(本件ではゴミ処理工場)をPFI事業者が設計、建設した後、契約期間を通してこれをPFI事業者がこれを所有しながら維持管理・運営を行う方式である。契約期間が終了する時点で公共に所有権が移管されるのだが、契約期間中は公共施設でありながら民間が建築物と設備を所有するため、固定資産税が課税されるという不合理な状況となった。このため、BOT方式のPFI事業の場合は固定資産税の課税が半分に減免されることと特例措置された。しかし、残り半分は課税されるわけで、このうち市町村に還流する分は良いとしても、県税に入る分は市町村から見れば還流漏れとなる。このため、VFMがやや出にくい構造的課題を持っていた。しかし、一方でBOT方式は民間所有となるため、施設や設備の修繕や改良等はPFI事業者の判断で実施できた。このため、社会ニーズの変化や不測の事態への対応には機動的に判断できるという利点もあった。こうしたことを理解した上で、BOT方式を採用することとした。

次の検討課題は、PFI事業者にどのような業務を委ねるかという枠組みの設定である。大枠的には、「市民が排出する可燃ゴミを受け入れ、これをエネルギーに転換するなどして再利用する事業を行うために必要な技術を提案し、設計、建設、維持管理・運営を行う事業者を募集する」という建付けになる。この時、筆者たちは、提案され得る技術と手法は①RDF製造と販売、②ゴミの炭化と炭化物の販売・利用、③ゴミ発電(ごみを焼却した熱で発電して売電する)、の3つが考えられるものと想定した。これらの異なるシステムを同時に評価する基準を作ることも難しい作業であった。

こうした想定に至る過程では、筆者たちが関連技術を保有する企業をあちこちに尋ね歩いてヒアリング調査をしていたから、各企業は必然的に関心を持つようになっていた。企業の参加意欲を喚起することも重要な仕事と認識していたから、ヒアリング調査は情報収集と応募企業の開拓という両面で有効であった。

一方、旧田原町は3町合併によって市となることで、ゴミの受け入れ量が増加することから、十分な広さを持つ新たにゴミ処理工場の建設用地を確保する必要があった。旧田原町内には、愛知県企業庁が埋め立てた産業用地が未分譲で残っていたため、これを買い受ける手はずを整え、近隣住民に説明をして合意を取り付けることとなった。この仕事は旧田原町環境課が担ったわけだが、相当の熱量でこれを成し遂げた。普通では考えられないほどの短期間でこの仕事を遂行した中心人物が当時の環境課長なのだが、この方は現在の田原市長である山下さんである。山下さんは、筆者がPFIの有効性を最初に説いた時からその実現に可能性を見出した人で、当時は多くの自治体がPFI導入に極めて慎重で、大抵の場合は二の足を踏むという情勢であった中、「これしか道はない。一丁やってやろう!」と気骨あふれる人であった。この時も「用地の確保(企業庁と周辺住民との合意)と愛知県廃棄物対策課との調整は俺達がやるから、事業の組み立てや募集の準備は任せる」と啖呵を切って獅子奮迅に走り回った。これを間近に見る筆者たちも自ずと力が入った。

(vol.48「その2」に続きます)

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